「男子、厨房に入るべからず」。昔はそんなことを言われたものですが、昨今は積極的に厨房に入って料理の腕を振るう男性が増えてきました。
連れ合いが病気で、先立たれてなど、やむなくという動機もあるでしょうが、純粋に料理が面白くてという人も多いようです。
かく言う筆者も、そのひとり。数年前にカミさんが股関節の手術で入院。やむなく始めた自炊が意外に面白く、退院後もときどき厨房に立つようになったのです。
おかげさまで、いささか腕のほうは上がったように思いますが、先日、カミさんから意外なダメ出しをくらいました。
得意の『とり肉のガッツリ煮』の下拵えをしていたときのことです。
突然、背後で「ピーッ、ピピピ!」と、カミさんの声。振り向くと、冷蔵庫からイエローカードならぬイエローパプリカを取りだして、私に突き出します。
「とり肉を触った手で野菜に触ったらダメ!」
そうでした、そうでした。調理中の生肉の扱いで注意しなくてはならないのは豚肉だけかと思っていたら、とり肉も同じくらいヤバイことを取材先で教えられ、カミさんにも話したことを思い出しました。
カンピロバクターという細菌があり、感染すると下痢や腹痛、発熱、吐き気など食中毒特有の症状が出ます。幼児や高齢者など、抵抗力が弱い人では重症化するケースも見られます。
また、ギラン・バレー症候群と言って、手足や顔面神経のマヒ、呼吸困難などを起こす難病を引き起こす危険性も指摘されています。
ナマのとり肉は、感染力も強いこのカンピロバクターに汚染されていることが多いのです。
カンピロバクターは熱や乾燥に弱いため、加熱すれば大丈夫ですが、落とし穴は調理中。買ってきたとり肉を包装から取り出したり、切ったりもんだりした手で、うっかり野菜など他の食材やまな板、食器などを触ると、そこに菌は移動。結果、二次感染が発生するリスクが高くなるのです。
とり肉料理を作る場合、豚肉同様、加熱処理に加えて、次のような心構えも大切です。
●生肉は他の食品と調理器具や容器を分けて処理や保存を行う。
●生肉を扱う作業は、できるだけ最後のほうにもってくる。
●生肉を取り扱った後は、十分に手を洗ってから他の食品を取り扱う。
●生肉に触れた調理器具などは使用後洗浄・殺菌を行う。
間もなく本格的な食中毒シーズン突入。男も女も、料理する人は味だけでなく、衛生管理の腕を磨くことも大切です。